あとりえSienaの書庫部屋

趣味のイラストと通院の体験を綴るブログです

歯のフラップ手術をした話

はじまりは大晦日

あれは5年位前のことでしょうか。まだ体調不良になる少し前の話。おそらく私にとって歯科治療初の外科手術を伴う虫歯治療です。もう二度とやりたくないですね。

東京帰省をしていた年末の大晦日に事件は起きました。夜、歯科用のフロスで歯の掃除をしていた際に左下小臼歯に入れていたフロスがなかなか抜けないので、力をいれて上に引き上げた直後にカラカラと音を立てて金属片のようなものが洗面台に落ちてきました。「えっ?!」と思ってよく見てみたら昔に治療した銀歯のクラウン(ほぼ自分の歯がないほどの大きさで神経も抜いている歯)でした。

鏡を見ると間違いなく外れていて、歯医者に行くにも明日は正月で年末年始にやっている歯医者なんてないし、この歯で正月を過ごすの??とちょっとしたパニックに。

普通の歯医者はまちがいなく年末年始やっているはずもありません。成人式の日くらいまで娘(当時園児)とこちらに滞在予定で「この状態ではご飯が食べられないじゃないか。大阪のかかりつけ歯科医院の年明け診察に合わせて帰宅するにも日数が長い、どうしよう」と考えました。

被せを仮で付けてくれる応急処置でいいから正月やっている歯医者…とネットで調べたら、「休日歯科応急診療」の掲載病院がその期間交代で開いてました!自転車で行ける距離の歯科医院を選び翌日早速連絡を入れました。

「歯の痛みなどはないですか?応急処置しかできないので、後日早めにかかりつけの歯医者へ行ってくださいね」

「帰省中取れないよう仮止めしていただければ大丈夫です。大阪戻ったら速攻かかりつけ医で診てもらいます」

その歯科医で仮止めしてもらったおかげで帰省中は無事に食事もできゆっくり過ごせました。待合室には歯が痛いという男性もいたなぁ、歯のトラブルつらいよね。

思っていた以上に深刻な病状

さて、大阪に戻り私はすぐにかかりつけの医院で事情を説明して診てもらいました。仮止めの対応は大正解だそうです。フロスで補綴物が取れるということは虫歯かなと思ったんですが…CTを撮ってみてみると、なんと昔治療した根幹治療で入れたメタルコアにより歯根破折していて、割れたヒビから細菌が広がり歯を支える歯槽骨を溶かしているという深刻な状態になっていました。

よくTVで聞く「歯周病」ですね、それも重度の。虫歯より恐ろしいですよこの病気。

「歯根破折したらほとんど抜歯になります」

「抜けた後そのままにしたら周りの歯が動きますよね、場所が小臼歯だからインプラントですか?嫌です、自分の歯でまだ生きたいです。何とか抜歯しないでヒビを埋める治療はないですか?」

「支えている骨が溶けちゃっているからね、ヒビを埋めるだけじゃダメだね。フラップ手術という外科治療で歯槽骨を60%位回復させる方法があるけれど人によってはそこまで回復しないかもしれない。自由診療になり治療後は歯茎が下がるしリスクのある歯であることには変わりない。延命治療になるから次にヒビが入った場合は抜歯」

「フラップ手術に賭けます(あまりのショックに泣きそうになる)。この年で高額リスキーなインプラント人生は嫌です」

こうして注射嫌いな私がこの治療をすることになりました。

ちなみにフラップ手術とは、歯科外科手術で部位の歯茎をべろんと切開し深い歯周ポケットに残存しているプラークや歯石などを直接目で確認して除去し、歯周組織再生をさせるリグロスという薬を塗布するオペです。考えただけでも怖い。

根幹治療のやり直しとヒビを埋めてフラップ手術

治療はまずマイクロスコープを使った根幹治療。当時マイクロスコープがなかった昔に保険治療していた歯なのでマイクロスコープで慎重にメタルコアを取り根っこの清掃。レントゲン・CTも確認しながらの根っこの先まで取り残しがないように消毒し、MTAセメントで充填(MTAセメントを使った後の再根幹治療は、歯とセメントの見分けが分かりにくく接着も強いので難易度がえらい高くなるそうです。この2度目の治療で完璧に充填させましょう)

自由診療なら根っこの消毒は2回程で終わります(保険だと4~5回通います)。ヒビの部分はスーパーボンドで封鎖しました。その後ファイバーコアを入れて補綴物の土台を形成します。今回はフラップ手術もあり、その予後も分からないためしっかりした仮歯を入れました。

手術は別日で予約を入れて、たしか1時間くらいかかったと思います。

歯茎の表面麻酔を塗った後に注射麻酔、麻酔が効く間に診察台で手術の説明を聞き、笑気ガスを装備(私に必須)し治療開始。痛みはなかったもののすんなり歯茎を切られた感覚(レーザーメスだそうです)、歯茎の間の汚れとバイ菌を掃除(スケーリング)の際のガリガリ音がとても気になって歯大丈夫なの?と心配に。その後リグロスを注入し黒い糸で縫合して終了。

ちなみに「手術で使われている溶けてしまう縫合糸があるけど、それを使うのはだめなんですか?(抜糸痛いし)」と聞いたらこの場合は溶けない糸がよいそうです。

その日は抗生剤と痛み止めを処方され帰宅。麻酔が切れた後は糸で縫われた歯茎が出血し舌でさわると嫌な感じ。食べるときに気を付けないといけないし。たしか少し腫れたと思いますが数日でそれも引き、どちらかというと麻酔なしの抜糸(ばついと)がめちゃ痛かったです。予後も良い感じです。

経過観察して数か月後、レントゲンで歯槽骨が増えているのを確認し「これならセラミックで補綴物を入れても良いのでは」ということで、最終的にセラミッククラウンを入れました。ああ、骨が回復してよかった、本当によかった。

ちなみに状態が悪かったら保険のクラウンにする予定でした。

どちらにせよ次割れたら抜歯のリスキーな歯です。実はリスキーな歯が別にもう一本あるんですよね、最終的に確実に抜歯になる根尖病巣の潜む奥歯が・・・。